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ハマちゃんの恋のゆくえにみんなが注目
・・・・・ October 10


『たこやきハマちゃん大ピンチ!』 
あかねるつ作:福田岩緒絵
2000年・国土社

[内容紹介]
 大阪から横浜の小学校に転校してきた4年生のハマちゃん。将来の夢はお笑いタレント、たこ焼き屋、野球選手と、めっちゃおもろい、めっちゃ元気な、めっちゃストレートな男の子です。
 ハマちゃんは転校した翌日、ももいろほっぺの女の子サクラに一目ぼれ。以来、ハマちゃんはサクラちゃんのために大奮闘する。サクラちゃんの誕生会に鉄板とボール持参で登場し、得意のたこ焼きづくりに腕をふるったり、風で高い木にひっかかったサクラちゃんのハンカチを、必死で取り返そうとわが身の危険もかえりみない。けれどもそんな一途さがかえってサクラちゃんを悲しませ、ハマちゃんの恋は大ピンチに!

 

ハマちゃんの恋のゆくえにみんなが注目(たまちゃん)

 小学校も4年生ともなれば男の子も女の子も恋の一つや二つは経験しているもの。けれども「今度は○○くんと隣の席になりたいなぁ。」「先生、バレンタインデー、私誰にあげるかわかる?」などと、小さい胸のときめきを伝えにくるのはたいてい女の子。男の子はほとんど自分からは口にしません。もちろん、わざといたずらしたり、ちょっかいを出しているその表情だけで、淡い恋心は一目瞭然なのですが。

 そんな4年1組の子どもたちが身をのりだして聞いたのが、『たこやきはまちゃん大ピンチ!』。女子も男子も、どきどきしながらハマちゃんの恋のゆくえに注目していました。
 ある日、ハマちゃんは大好きなサクラちゃんのことばかり考えていて授業どころではありません。ついに先生に叱られますが、ハマちゃんはへっちゃら、Vサインして返します。こんなふうに自分の気持ちに正直なハマちゃんはクラスメイトたちのあこがれです。
 物語を聞いている私のクラスの子どもたちも「こんなんありかいなぁ!」「ええなぁ!」と共感の声をあげています。どの子もハマちゃんのように、恋ゆえに授業なんて上の空という体験があるのでしょう。でもハマちゃんのように堂々としていられないからこそ、ハマちゃんのものおじしないストレートさがうらやましいようなのです。 

 さて、ハマちゃんはサクラちゃんの誕生日会で手作りたこ焼きの大盤振る舞いをし、サクラちゃんは大感激。誕生日会に参加した他の友達も一緒になって「やったね、ハマちゃん!」と拍手喝さいしてくれました。ハマちゃんの恋を応援する周りの友達が素適です。
 この時もわが4年1組の子どもたちは、まるで自分の恋が成就したかのように立ちあがって喜びました。
 ところが、ハマちゃんの一途な恋もついにエスカレートしすぎました。風でとばされたサクラちゃんのハンカチを高い木の枝から取ろうとして、校舎の2階の窓から無謀な挑戦をしてしまったのです。そのために、校長先生も巻き込んだ学校中の大騒ぎとなってしまいました。自分のハンカチ1枚からこんな危険で大変な事件に発展してしまって、サクラちゃんはびっくりするやら怖かったやらで泣き出してしまいました。サクラちゃんが喜んでくれるとばかり思っていたハマちゃんは思いも寄らぬ反応にびっくりし、愕然として、学校を飛び出します。

 物語を聞いている私のクラスの子達も、女の子は「ハマちゃんアホやなぁ。なんでサクラちゃんの気持ち、わからへんのやろ」とつぶやいていたりしますが、男の子は「ハマちゃん、いけいけ!」と興奮しておいて、突然のサクラちゃんの涙に驚いている様子です。
 いよいよ最後の場面、ハマちゃんが担任の若い男の先生に慰められているところへ、4年生の友達全員が心配して駆けつけてきてくれます。そこにはなんと、笑って手を振るサクラちゃんの姿が……。「サ、サクラちゃんや。」立ちあがるハマちゃんの背中を先生がたたきます。「あきらめるのは早いぞ。」
 うちのクラスの子どもたちはここでいっせいに顔がほころび、にんまりとして、ほっと胸をなでおろしました。ハマちゃんの周りの子どもたちがハマちゃんの恋をいっしょになって応援し、見守りつづけてくれた、物語の中のそんな仲間のあたたかさが、私のクラスの子どもたちまですっぽりと包みこんだラストシーンでした。

 この本がきっかけとなったのか、照れ屋であまのじゃくの男の子達が少しずつ正直に「あの子が好き」という気持ちを表現できるようになってきました。その中でも特に素直になり始めたのがたかしくんです。
 たかしくんは根っからの関西ッ子らしく、元気で、きどらない、毎日ぼけとつっこみでじゃれあっているような子です。その率直さ、ひょうきんさはまるでハマちゃんそっくり。
 たとえば、授業中でもいつでもおならをこきたくなったら、「ブーッ」と爆音を放ちます。音の出ない時くらい黙っていればいいのに、「あっ、今、すかっしっぺ出てもうた。」とぺろっと舌を出します。「先生、先生」と人なつっこく話しかけにきてくれること頻繁で、好きな虫や遊びのこと、友達や家庭のこと、時にお父さんとお母さんの夫婦喧嘩の一部始終まで実況中継してくれます。気分がのると、ところかまわず、踊り出します。 
 こんな分かりやすくてストレートな子なのですが、こと大好きなあやねちゃんに対しては、全然素直になれません。わざとたたいて泣かせたり、乱暴なことばをあびせたり、話しかけられてもいじわるで返したり、帰りがいっしょになってもからかって困らせたり……。そのくせ、あやねちゃんと他の男の子が楽しく係活動していたり、おしゃべりしていると、気になって仕方がない様子。遠足の班決めの時も、席替えの時もそわそわしっぱなしですし、あやねちゃんが風邪でお休みしようものなら、なんとなくさびしげです。

 ただのひょうきんもののように見えるたかしくんですが、実はシャイで気弱で一途な「恋する少年」の一面ももっていたのですね。たかしくんのお母さんの話によると、彼は入学式であやねちゃんに心奪われて以来、4年生になった今日までただ一筋に彼女を恋慕っているようなのですから。
 そんなたかしくんでしたが、自分に似ているハマちゃんがサクラちゃんのためにひたむきにぶつかっていく姿に動かされたのか、最近は以前よりずっと素直に、好意を好意として表現できるようになってきたようです。あやねちゃんが忘れ物をするとすっと差し出して貸してあげたり、体育の苦手なあやねちゃんに親切に手助けしたり、帰り道、逃げないで一緒にしゃべりながら歩いていたり……。たかしくんとあやねちゃんが並んで駅の階段を降りてくる姿は、映画「小さな恋のメロディー」の二人のようにほほえましかったと、たかしくんのお母さんがあとでこっそり教えてくれました。

 しかし、たかしくんの弱気な恋心をプッシュしてくれたのは、ハマちゃんの果敢な姿だけではありません。何よりもハマちゃんの周りの子どもたちといっしょになって、わが4年1組のみんながハマちゃんの恋を応援してくれた、その共感体験が、たかしくんを励ましてくれたように思います。ひとりの友達の一途な恋をバカにしたり、軽べつしたりしないで、息をのんで見守り、一緒に喜んだり悲しんだりした共感体験が、うちのクラスの子どもたちの中にも互いの信頼感を育ててくれたようです。誰しも心細い初恋は、まわりのの温かさで背中を押してあげたいですよね。

 

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『でんしゃがくるよ!』
シャーロット・ヴォーグ・作
竹下文子・訳
1998年、偕成社

パパ おぼえてる?

「パパ おぼえてる?」と娘がきいてきました。何を、とききかえしてもはっきり言ってくれないので、「ないしょで教えて」、とお願いしてみました。すると私の耳に顔を近づけて、ヒソヒソ声でゴショゴショと耳うちしてくれる。「でんしゃ いっしょにみたでしょ おぼえてる?」

(はしの)

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