土井敏邦(どいとしくに)
1953年佐賀県生まれ。映画『沈黙を破る』で「石橋湛山記念・早稲田ジャーナリズム大賞」「キネマ旬報文化映画部門 第1位」、『飯舘村──故郷を追われる村人たち』で「ゆふいん文化記録映画祭・松川賞」、『異国に生きる──日本の中のビルマ人』で「文化庁映画賞・文化記録映画優秀賞」などを受賞。主な著書に『アメリカのユダヤ人』、『沈黙を破る』(いずれも岩波書店)など。
発行日 | 2017年11月発行 |
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価格 | 本体3704円+税 |
ISBN | ISBN978-4-8118-4094-9 |
Cコード | C0836 |
「この胸の痛みは、誰にもわからない──」
深く刻まれた傷を抱え、壮絶な戦後の半生を送ったハルモニたちのありのままの声と日常。
元「慰安婦」たちが肩を寄せ合って暮らす韓国の「ナヌム(分かち合い)の家」。1994年12月から2年にわたって日本人ジャーナリストがハルモニ(おばあさん)たちの生活と声をカメラで記録した。元「慰安婦」という共通の体験以外、その境遇や歩んできた道はまったく異なるハルモニたち。支えあい、時には激しくぶつかり合う。そんな生活の中で彼女たちは消せない過去の記憶と、抑えられない感情を日本人の記録者にぶつけ、吐露する。あれから20年近く経った今、あのハルモニたちはもうこの世にいない。残されたのは、彼女たちの声と姿を記録した映像だった……。
2009年度キネマ旬報文化映画ベスト・テン第1位に輝いた『沈黙を破る』、2013年度同ベスト・テン第3位で文化庁映画賞文化記録映画優秀賞を受賞した『異国に生きる 日本の中のビルマ人』の土井敏邦監督が、戦後70年の2015年、あらためて「慰安婦」問題の”記憶”を辿るために完成した注目の最新作。3時間半を超えるこのドキュメンタリー映画は、「問題の解説」や「史実の検証」を目指したものではない。被害女性たちの証言を ありのままに記録した映像作品である。
監督・撮影・編集:土井 敏邦
編集協力:森内 康博
整音:藤口 諒太
配給:きろくびと(info@kiroku-bito.com)
2015年/日本/215分(124分+91分)
写真:安 世鴻
第一部 分かち合いの家 124分
「ナヌム(分かち合い)の家」で暮らすハルモニたち。過去を忘れるための酒が手放せず荒む女性、息子に過去を知られ悩み苦んだ女性、戦後、結婚もできず孤独に生きてきた女性……。彼女たちの日常生活とともに、「慰安婦」の記憶や戦後の波乱の半生を語る5人の声を丹念に記録。
第二部 姜徳景 91分
ナヌムの家の住人で最年少の姜徳景(カン・ドクキョン)は、「女子挺身隊」として日本に渡るが、脱走したことで「慰安婦」にされる。望まない子を宿し、戦後帰国した彼女の波乱の半生。その体験と心情を姜徳景は絵で表現した。やがて肺がん末期と宣告される。彼女が死を迎えるまでの2年間を記録。